事業承継における弁護士

弁護士は紛争の顕在化した案件(※株主代表訴訟、取締役・監査役の責任追及などの場面)には強いのですが、会社法の細かい条文や手続きに精通している方は意外と多くありません。

それも仕方のない面があって、弁護士は取扱い分野が極めて広く、専門分野が細分化される傾向にあるのです。会社法分野は特に専門性が高い業務であり、事業承継の際に弁護士へ相談する場合は、会社法に精通しているかどうか見極めることが重要になります。

では弁護士は事業承継において、どんな時に必要とされるのでしょうか。
まずは「相続争い」が考えられます。事業承継対策の過程で、紛争が顕在化するケースがあります。多くは遺産の分配率に不満を持つ相続人が原因です。

ほかには「少数株主争い」があります。事業承継対策の過程で、少数株主が株式買取請求や会計帳簿閲覧申請等を行使してくる場合、企業防衛をする必要が生じ、争いに発展するのです。
また「経営権争い」というものも考えられます。会社内で後継者がきちんと決まっていない場合、経営権争いが顕在化し、争いになるケースがあります。

このように、事業承継において弁護士が果たす役割も存在するので、連携ができるに越したことはないでしょう。

事業承継における司法書士

一方、士業のなかで最も会社法に精通しているのが、司法書士です。
司法書士は事業承継において議事録の作成や登記を行うことができます。事業承継スキームを組むにあたって株式交換や株式移転を行うことがありますが、その際に登記業務が発生するのです。

しかし大半の司法書士は事業承継に関連する業務よりも不動産決済業務に流れてしまいます。
また、商業登記を扱っていても、会社設立・役員変更といったオーソドックスな登記が大半で、事業承継まではカバーしていないケースが多いです。また、税務・財務に精通している司法書士は少ないのが現状です。

事業承継においては種類株式設計や組織再編などにも対応できる、本当に会社法に精通している司法書士を探すことが重要です。

司法書士の事業承継における主な業務は以下のようなものがあります。

種類株式設計

少数株主対策、事業承継スキームで種類株式を発行する事が多く、種類株式に精通した司法書士が求められる。

定款チェック

事業承継を円滑に進めるために、定款を対象会社に適合したものに変更する必要がある。

株主名簿整理業務

事業承継を進めるにあたり、対象株式の株主構成を把握する必要があるが、会社に株主名簿が存在しないケースがある。この場合、株主名簿を復元する必要がある。

遺言書作成

事業承継対策に付随する相続対策として、自社株式・不動産等の生前対策をする必要がある。

民事信託

万一に備えた経営権の代理行使や遺留分の対策、議決権の集約などが可能になる。司法書士は主に契約書の作成を担当する。

事業承継をするにあたって、事業承継のことがわかっている弁護士、司法書士と税理士、そして財務がわかる保険営業マンでチームを組むことが重要です。顧客本位の「もめない、困らない事業承継」をしようとするならば、チームの連携が不可欠なのです。