まず、株主総会の役割を理解する前提として、株主と取締役の関係を理解する必要があります。

まず、株主とは株式会社にお金を出した人=出資者のことという。そして取締役(代表取締役を含む)は株主から会社経営を任された人たちのことをいうのです。

つまり、株主と取締役は、「会社を適正に経営することで利益を上げ、その利益を配当という形で株主に還元する。」という内容の委任契約を結んでいるのでいます。

 

もっとも、中小企業の多くは、会社は株主と取締役が同じであることが多いため、あまりこのような関係は意識されていません。

そして、株主総会とは、株主で構成された、株式会社における最高意思決定機関であり、会社の根本に関わる重要なルール(定款の変更や取締役の選任・解任、合併や解散等)を決定することができます。

次に、株主総会のうち「定時株主総会」は、毎事業年度のあと、年に一度必ず開催される株主総会のことであり、決算の承認や役員の選任などが行われます。

次に、「臨時株主総会」は、急遽、会社にとって重要事項(株式の有利発行や、重要な財産の譲渡等)を決める必要が生じた際に臨時で開かれる株主総会をいいます。

定時株主総会は、決算日から3ヶ月以内に開催することが会社法で義務づけられています。日本では3月末決算の企業が多いため、5~6月(特に6月後半)に多く開催されるという現象が生じます。

このように、法律上株総会は非常に重要な機関であるにも関わらず、中小企業の多くでは、実際には株主総会が開かれていないというのが現実です。その背景として、中小企業の場合、株主のほとんどが代表取締役や、他の取締役、その家族であることが多く、さらには、実際に誰が株主なのか正確に把握していないとうことも珍しくありません。そのため、中小企業においては、登記や確定申告をする際に、実際に株主総会を開催することなく、形式的に株主総会議事録を作成することが常態化しているのが現状です。そうは言っても、代表取締役が100%株主である場合や、会社が滞りなく運営されている状況のときは、通常、大きな問題は生じません。しかし、事業承継や株主を保有している役員が退任する場合、「株が動くとき」問題が顕在化することが多のです。

言い換えると、株がお金に変わると分かったとき、それまで何も言わなかった株主が、自分は株主であるも関わらず、一度も株主総会に呼ばれていない。会社は利益を出しているにも関わらず、一度も配当を貰っていない等、権利を主張し始めるのです。加えて、少数株主であっても、会社法上3%の株式を保有していれば、会計帳簿閲覧請求権(会社法433条)や、役員解任の訴えの提起権(会社法854条)等の権利が認められています。そして、中小企業においては、実際に株主総会の決議を経ることなく、多額の借財や代表取締役と会社との利益相反取引が行われていることが多く、これらは会社法上の手続きを経ていないため違法行為として、株主からの取締役への責任追及の訴えの(847条)対象となる可能性があるのです。

このように、株主総会を適法に開催していない場合、思わぬ株主からの権利主張により、株式の買取り資金や、弁護士費用等、多額の費用が会社から流出する事態が生じます。

保険営業マンは、このような観点から経営者に株主の正確な把握、株主総会の重要性についてアドバイスして、保険提案に繋げてください。